【相続対策】相続時精算課税制度の活用 その3
相続時精算課税選択の特例(住宅取得等資金との併用)
平成31年6月30日までの間に、父母又は祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けた20歳以上の子又は孫が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であることが見込まれるときは、贈与者の年齢が60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができます。
要件
1 受贈者の要件
(1) 贈与時に日本国内に住所を有するなど一定の者。
(2) 贈与者の直系卑属である推定相続人である子又は孫であること。
(3) 贈与を受けた年の1月1日現在において20歳以上であること。
2 居住用家屋の要件
居住用の家屋とは、次の要件を満たす日本国内にある家屋をいいます。
(1) 家屋の登記簿上の床面積が50平方メートル以上であること。
(2) 購入する家屋が中古の場合は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
イ 耐火建築物である家屋の場合は、その家屋の取得の日以前25年以内に建築されたものであること。
ロ 耐火建築物以外の家屋の場合は、その家屋の取得の日以前20年以内に建築されたものであること。
ハ 地震に対する安全性に係る基準に適合するものとして、一定の「耐震基準適合証明書」、「住宅性能評価書の写し」又は、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されていることを証する書類により証明されたものであること
ニ イからハのいずれにも該当しない家屋の場合で、その家屋の取得の日までに同日以降に耐震改修工事を行うことについて所定の手続きをし、かつ、入居の日までに耐震改修工事を完了し、耐震基準に適合することとなったことにつき、一定の書類で証明されたものであること。
(3) 床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の用に供されるもので
あること。
3 増改築等の要件
増改築等とは、贈与を受けた者が日本国内に所有する自己の居住の用に供している家屋について行われる工事のうち一定のもので、次の要件を満たすものをいいます。
(1) 増改築等の工事に要した費用が100万円以上であること。なお居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上でなければなりません。
(2) 増改築等後の家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が専ら居住の
用に供されること。
(3) 増改築等後の家屋の登記簿上の床面積(区分所有の場合には、その区分所
有する部分の床面積)が50平方メートル以上であること。
贈与税の計算
平成27年に父(59歳)から4,000万円、母(58歳)から1,000万円の住宅取得等資金の贈与を受け、良質な住宅用家屋以外の住宅を取得し、いずれの贈与についても相続時精算課税を選択した場合
(1)父からの贈与(住宅取得等資金の特例及び相続時精算課税の特例を受ける場合)
ア 課税される金額の計算
4,000万円-1,000万円(非課税金額)-2,500万円(相続時精算課税の特別控除額)=500万円
イ 贈与税額の計算
500万円×20%=100万円
(2)母からの贈与(相続時精算課税の特例のみを受ける場合)
ア 課税される金額の計算
1,000万円-1,000万円(相続時精算課税の特別控除額)=0円
住宅取得等資金の非課税制度は受贈者1人について1,000万円が限度となっているため、父からの贈与について非課税制度を適用して1,000万円を非課税とした場合には、母からの贈与については非課税制度の適用を受けることはできません。
なお、例えば、住宅取得等資金の非課税限度額の1,000万円を分けて適用することは可能です。(父からの贈与の一部(例えば500万円)と母からの贈与の一部(500万円)として、残りをそれぞれの贈与について、相続時精算課税の特例を受けることも可能です。)
(参考文献)
国税庁HPタックスアンサー「No.4503相続時精算課税選択の特例」、
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4503.htm、
「No.4504住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の計算(相続時精算課税
の選択をした場合)」、https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4504.htm
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