【相続対策】贈与による対策 その8

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の活用

直系尊属である祖父母や父母が、20歳以上の子や孫へ住宅を取得するための資金を贈与した場合には、一定の要件の下で、贈与税が非課税となります。

本特例の内容と効果

1 平成28年度中の契約であれば、受贈者1名につき省エネ・耐震住宅等の場合は1200万円、それ以外の場合は700万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。

2 3年以内に贈与者が死亡しても贈与分は相続税の課税価格に算入されない。

3 精算課税贈与、暦年贈与と組み合わせることで大型の生前贈与ができる。

4 孫へ贈与する場合は、世代飛ばしとなり相続税を軽減できる。

制度の概要

1 制度のあらまし
平成27年1月1日から平成31年6月30日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた受贈者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までにその住宅取得等資金を自己の居住の用に供する家屋の新築若しくは取得又はその増改築等の対価に充てて新築若しくは取得又は増改築等をし、その家屋を同日までに自己の居住の用に供したとき又は同日後遅滞なく自己の居住の用に供することが確実であると見込まれるときには、住宅取得等資金のうち一定金額について贈与税が非課税となります(以下、「非課税の特例」といいます。)。

2 受贈者の要件
次の要件の全てを満たす受贈者が非課税の特例の対象となります。

(1) 次のいずれかに該当する者であること。
イ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有すること。
ロ 贈与を受けた時に日本国内に住所を有しないものの日本国籍を有し、かつ、受贈者又は贈与者がその贈与前5年以内に日本国内に住所を有したことがあること。
ハ 贈与を受けた時に日本国内に住所も日本国籍も有しないが、贈与者が日本国内に住所を有してる。

(2) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属であること。
 なお、直系卑属とは子や孫などのことですが、子や孫などの配偶者は含まれません。
(3) 贈与を受けた年の1月1において20歳以上であること。
(4) 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。

3 住宅取得等資金の範囲
住宅取得等資金とは、受贈者が自己の居住の用に供する家屋を新築若しくは取得又は自己の居住の用に供している家屋の増改築等の対価に充てるための金銭をいいます。なお、居住用の家屋の新築若しくは取得又はその増改築等には、次のものも含まれます。

・その家屋の新築若しくは取得又は増改築等とともにするその家屋の敷地の用に供される土地や借地権などの取得
・住宅用の家屋の新築(住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の翌年3月15日までに行われたものに限ります。)に先行してするその敷地の用に供される土地や借地権などの取得

ただし、受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある者との請負契約等により新築若しくは増改築等をする場合又はこれらの者から取得する場合には、この特例の適用を受けることはできません。受贈者の一定の親族など受贈者と特別の関係がある者とは、次の者をいいます。

(1) 受贈者の配偶者及び直系血族
(2) 受贈者の親族((1)以外の者)で受贈者と生計を一にしているもの
(3) 受贈者と内縁関係にある者及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの
(4) (1)から(3)に掲げる者以外の者で受贈者から受ける金銭等によって生計を維持しているもの及びその者の親族でその者と生計を一にしているもの

注意点

本特例の注意点として以下があります。

1 贈与により資金を取得した翌年3月15日までに住宅用家屋を取得等して居住の用に供さなかった場合には、適用されない場合があります。

2 本特例の適用は平成31年6月30日までです。

3 特例の適用には、居住、受贈者、住宅取得等資金、家屋についてそれぞれ一定の要件があります。

(参考文献)
・国税庁HPタックスアンサー「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」、https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4508.htm
・大西隆司ほか相続対策実務研究会編集『法務・税務から見た相続対策の効果とリスク』170頁以下(新日本法規、2015年)

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