【相続対策】遺産分割1
遺産分割の時期
共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で遺産の分割をすることができます(民法907条1項)。
ただ、相続開始から長期間にわたって未分割の状態におくのは、不安定ですし、ことに相続税が課税される場合、未分割状態では税務上の問題が数多く生じます。
このため、実務的には相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)が一応の分割時期の目安となっています。
なお、遺産の評価の時期について、相続税の課税上は相続開始時とされていますが、遺産分割では分割時とするのが一般的な解釈です。
遺産分割の方法
有効な協議分割となるためには、分割内容について共同相続人全員が合意することが必要です(包括受遺者、相続分譲受人がいる場合にはその者も含めます。)。
1人でも反対者がいる場合は、有効な協議分割はできませんので、さらに協議を継続し、合意見込みがなければ、遺産分割の調停または審判の申立てを検討します。
遺産分割の当事者
相続放棄の意思を家庭裁判所に申述した者は、最初から相続人にならなかったものとみなされるので(民法939条)、遺産分割協議の当事者にはなりません。
これに対し、放棄の意思を表明していても上記手続きを経ずに3ヶ月経過した場合など、事実上の放棄である場合には、遺産分割協議をする際に無視することはできません。
このような場合、その者も遺産分割協議の当事者に含めて形ばかりの遺産分けをするか、その者が「相続分のないことの証明書」を作成する方法が行われています。
相続人に20歳未満の未成年がいるときは、親などの代理人が分割協議に参加します。親も相続人の場合には利害関係が対立するため、家庭裁判所に申し出て、特別代理人を選任してもらうことが必要です。認知症などで判断能力が衰えた人がいる場合も、成年後見制度を利用し、後見人を選任してもらいます。
相続人全員の合意が必要ですから、行方不明の相続人も、所定の手当てをして遺産分割協議に参加させる必要があります。
遺産分割協議書の作成
相続人全員による話し合いで遺産の分け方が決まったら、「遺産分割協議書」を作成します。これは法的に作成が義務付けられたものではありませんが、不動産の相続登記の名義変更やよ金の払い戻しの際に必要です。
また、口頭だけでの話し合いだけだと、あとになって「いった、いわない」の争いになってしまうこともあります。そうしたトラブルを避けるためにも書面での確認は必要です。
(参考文献)
・相続手続研究会『事例式相続実務の手続と書式』(新日本法規出版、2009年)
・小池正明『民法・税法による遺産分割の手続きと相続税実務』86頁以下
(税務研究会出版局、第7版、2015年)
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