【相続対策】相続の限定承認
限定承認の意義
本来、相続人は被相続人の有していた債務を一切承継するのが原則(民法896条)ですが、限定承認は、相続人が相続財産を限度とした有限責任を負うという相続の仕方です(民法922条)。
例えば、被相続人は個人商店を経営していたが、経営が悪化しており借金があるようだが、どれくらいあるのかわからず、マイナスの財産とプラスの財産のどちらが多いのかわからないといった場合などです。限定承認はプラスの財産の範囲でマイナスの財産の債務を背負いますが、プラスの財産を超える借金や債務があったら、その分は返済の義務はありません。
債務の返済後に財産が残れば、残った財産を相続できます。
相続放棄と限定承認
相続放棄と限定承認は次のように使い分けることができます。
◯被相続人の相続人は子だけであり、配偶者はいない。ただし、被相続人には弟と妹がいる。
◯被相続人の財産は債務超過であることが明らかである。
このケースでは、子が2人とも相続放棄を行うことも考えられますが、仮に子が放棄をすると、相続権は弟と妹に移転することになります。
したがって、債務超過となっている被相続人の財産は、弟と妹に改めて相続問題が生じます。弟と妹が相続放棄をすれば問題は解決しますが、親族間で相続問題を移行させたくないということも考えられます。このような場合には、子が2人とも限定承認をすることによって、この段階で問題が解決できるわけです。
限定承認の手続き
相続人が限定承認をしようとするときは、相続放棄と同じように相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません(民法924条)。相続放棄と異なるのは、限定承認の申立ては相続人の全員が行わなければならないことです。
したがって、共同相続人の一部に単純承認をする者があれば、他の相続人は限定承認を行うことはできなくなります。
まとめ
◯相続の放棄や限定承認をするなら相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません。
◯相続放棄は1人でもできるので自分の判断で手続きができます。
◯何も手続きをしないと、単純承認となり借金や債務を含めて相続することになります。
(参考文献)
・小池正明『民法・税法による遺産分割の手続きと相続税実務』72頁以下
(税務研究会出版局、第7版、2015年)
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